出る杭になる前に殺人パンチャー佐和田先輩の強烈な右フックを叩き込まれた瞬間、私はしゃがみ込んでしまいました。
後にも先にもダウンしたのは私の格闘技人生であの1回だけです。
K先輩のボディーフックを喰らって肋骨を骨折した時も、すぐに反撃してローリングソバットを鳩尾に決めました。T先輩のボディーアッパーを喰らった時もダウンはしませんでした。
しかし、佐和田先輩のパンチはまずかった。
記憶が飛んだ訳ではないのですが、このたった一発で私の前歯はほんの少し欠けてしまい、足も動かなくなってしまったのです。
ちなみに大道塾では顔面ありのスパーリングをする際に、スーパーセーフという透明の半球状硬質プラスチックとボクシングのヘッドギアをミックスした専用防具を装着します。
当然、門下生・選手の安全を確保するために東先生が思考錯誤を繰り返して完成した代物です。頑丈さも生半可なものではありません。
ところが、佐和田先輩の殺人右フックは左斜め前に大きく一歩踏み込んで打って来るので・・・
・見えない(一瞬視界から消える)
・気付いたら目の前にある
・真正面から突き刺される
のです。
マウンド上からワインドアップで振りかぶって剛速球を投げ下ろしてくる、
我らが福岡ソフトバンクホークスの守護神 馬原孝浩投手の最速153km/hの直球を顔面に喰らうことを想像していただければ、恐怖のイメージも湧こうというものです。
(ちなみに私はシーズンオフの馬原投手のトレーニング指導をさせていただいたことがあります。その時は武術を取り入れたトレーニングを行いました。)
さて、それを実際に喰らうとどういうことが起きるのか?
客観的に側面から見ると・・・
1)スーパーセーフの硬質プラスチック部分に正面から完璧に垂直に拳が突き刺さり、
2)ヘッドギアの変形が始まり、
3)顔面とプラスチック部分との間に10cmも確保されている空間が急速に狭まり、
4)どういうわけか顔面から血が噴き出す
のです。ちっともスーパーセーフじゃないっ!と怒る間もなく立っていられなくなってしまうという訳。恐ろしいでしょ?
このような理由により、私は毎週3回もこの悪魔の前に立つ勇気はなく、自然と筋トレ
優先のパターンにはまり込んで行ったという訳でした。
ちなみに大道塾での稽古から足は遠退いていくのですが、空手や格闘技が嫌いになった訳ではなく、ジムの友人や法政大学のサークルを通じてフリーに活動の場を持っていました。
その中でキックの全日本ミドル級3位やテコンドーの軽量級全日本チャンピオンともスパーリングをやらせてもらう機会がありましたが、痛い目にあったことは一度もありません。
九州総合格闘技選手権重量級で優勝したE君は何度かさせてもらいました。
つまり何が言いたいかというと尻尾を巻いて大道塾を離れた私が弱いのではなく、
あの佐和田先輩が悪魔的に強かったというだけなのです。
そもそも全盛期のマイク・タイソンを「倒せますよ」と事もなげに言い切ってしまう人間です。
危険極まりないと本能が感じました。
それでも私が廃人にならずに済んだのは、筋トレで少しずつではありましたが筋肉が増えつつあったこと、体幹部強化の一環として首の強化を行っていたことが理由として考えられます。
そう。首を鍛えると良いことがあるのです。この思い付きが確信に変わるのはもっとずっと後の話、FITNESS & SPORTS CONDITIONING GYM GETをOPENして以降の話になりますが、どうやらその辺の話に触れる段階が来たようです。。。